コトバ 風物 ジッタイ

ゲンショウの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

日記

八ヶ岳山麓の冬と寓話 または 白黒写真作例

お題「ささやかな幸せ」 モノクロームの世界に降りた冬の女王と、ハツカネズミの巣のような集落の物語 1 凍える町の駅前風景 荒涼峰から吹き下ろす冷たい風が、一陣。おおよそ見える限りの景色といった景色を、どうどっどと揺らして通り過ぎました。すると、…

2020を折りたたむ

お題「ささやかな幸せ」 1. 凍り付いた世界 布団中毒 冷たい空気と布団の中に発生する重力の関係。朝起きてもとても表へ出る気にならず、せんべい布団の隙間から窓を覗いてため息を吐き捨ててから、また布団をかぶり直すそんな日々が続いていた。 この布団…

モノクロ写真 冬の重機が寒さに沈んで

朝の散歩で出会った景色。 夜明けに差す光 朽ち果てた時間と色彩の終わり。 のり廃られた重機。傾いて ボロボロになった運転席 乗り捨てられた重機がひっそりと寒さに沈んでいる。 朝日の光る 沈む履帯 モノクロームの世界の中で、重ったるい重機は尚のこと…

晩秋から初冬へ移り変わる景色の写真

お題「わたしの宝物」 晩秋から初冬に撮った写真と雑感 霜の降りた枯れ葉 1 紅葉の残り 朝起きると霜が降りていた。これで秋の終わり。 冬空とトタン それが冬の始まり。鼻先が少し冷たい。しびれるようにヒリヒリする。こうやってだんだんと空気の線が細く…

群像と仮面と秋桜と秋

見知らぬ人々の群像――顔の無い個体――防衛機制と想像力。 1 仕事柄知らない人々の中へ入っていかなけらばならないことが多々ある。知らない人々の集団とは即ち群像で、彼らは個体としての顔を持たない。これが僕の仕事だからと理性では割り切ったつもりでも、…

夢に移ろう現実の夢

今週のお題「2020年上半期」 1 踏切 夏色 一週間続いた長雨が、今朝になると嘘のように止んでいた。体が重い。昨夜の酩酊のツケが体を蝕んでいる。 ここの所、休みの度に雨に降られていた。何度恨めしく垂れる雨だれを窓越しに睨んだろう。それに重ねてこの…

名も無き花にも名前はある

お題「わたしの癒やし」 あやめ? 花の名前がよくわからない。綺麗だから撮るが、撮ったところで果たしてこれは何者ぞ?と思う。でも綺麗だから撮る。思いながら撮る。とにかく撮ってみる。とりあえず撮ってみる。よくわからんが撮ってみる。 ・・何故なら綺…

カメラを肩からぶら下げて

今週のお題「外のことがわからない」 お題「リラックス法」 あぜ 1 世にはびこる疫病は、未だ混迷の出口すら見えず、さりとて幸い体に不調はない。世間では外出の自粛が叫ばれ、また多くが店の門を閉ざしている状況。さて、そんな中での大型連休だった。 平…

永遠と1日について2

今週のお題「家飲み」1静かな夜。僕は疲れた仕事の余韻を洗いながそうとビールを二缶飲んだ。それで気分がいくらかマシになったから、いよいよ本腰を入れるため、冷凍庫から不揃いのかち割り氷を四つとりだしてグラスに沈めた。ピスタチオの袋の封を開けて、…

アル中ふぜいがなんかながながとえらそーにいっとるわ

1 ああ、気がつけば五月も早下旬で、いよいよと初夏と。空の匂いも随分瑞々しく、空気 がまったくよろしゅうござんすな。今時分が一番調度良い・・過ごしやすい季節ではないでしょうか? これがまたしばらく時を重ねてって、七月八月てなりますってーと空気…

名画『永遠と一日』について。または 僕が雨を待つ理由と、雨音のない月夜の話2

1 雨を待っている僕は、今もこうして窓の外から差し込む月光に照らされている。深夜二時三十分。木々の間から見える月は、やがてもう数時間もすれば、あの山の向こうに落ちるだろう。そうやって世界が少しずつ動いて、こっちが朝日に包まれる頃、この星のど…

遅すぎた新年のあいさつ

今週のお題「2017年にやりたいこと」 えー、七草ですな。余った餅を粥にぶち込んで、正月もこれで一応お終いという訳で御座いまして。ってまあ、のんびりとした昔とは時代が違います故、正月なんぞ早昔。皆々様もうすでに労働にいそしんでいる事と存じ上げま…

入院顛末記3

そう言えば怪我の写真なんかも幾枚か撮ったのですが、まあ、ああいう画像は人を選びます故ここには載せませんが、酒の酒菜にグロ画像でもなんてぇお方がいらっしゃれば、仰ってください。まあ、グロイったって人体ですからね。普段生きてこうやって生活して…

入院顛末記②

さあ、さてそれからは。 って。 先だっての入院顛末記の続きで御座います。 ytugatakewo.hatenadiary.com 1 まああたしゃ日頃から、こう鈍感で御座いましてな。その日もふくらはぎが欠けていて、それで一向に痛みを覚えないので御座いますよ。しっかし、痛…

記憶について

1 えーいろいろと便利な世の中で。便利ってのは良いもので、まあ、いろいろな事・物が容易くなってしまう。例えばあたしには東京に友人が幾人か居て、今あたしは都を離れております故、なかなか会うこともままなりません。が、今時分ですとスカイプだの・・…

休日にしなかったこととしたこと

しなかったこと 早く起きようと思ったけれど、しなかった。 お湯を沸かしてお茶を飲もうと思ったけれど、しなかった。 読みかけの本を読もうと思ったけれど、しなかった。 医療保険について再検討するためにネットで調べようと思ったけれど、しなかった。 実…

ニコニコ大好きストーブ料理 序説

1 火という物は不思議なもので、それを見つめているだけで・・癒し、ヒーリングなんて申しますと昨今、随分と広告じみた俗っぽさを感じてしまうものですが、しかしそれに似た感情を。何なんですかな。あの赤い赤いともし火の揺らぎ。 そう言えば「動物は火…

深い秋がいつから始まるのかよくわからない

さて皆々様。秋と言ってようやく、山に朱や黄と色に賑わいを見せ始めた時分で御座いますが、それでももまだまだ言って浅く。色づき始めたといった塩梅で。 しっかし放っておきますと、こうたちどころに冬は襲い掛かってくるものですから、「ああ、秋深し」と…

魍魎はびこる黄昏の・・前の不思議な事

1 いや、夕刻。確か十七時を僅かに越えた辺りだったでしょうか。この頃は日の落ちるのもめっきり早くなりまして、もう薄ら暗い空に。あのな、鴉が。群青色の空にあの黒い黒い鳥どもが、こう何十羽と飛び乱れていたのであります。その妖しい事。それは魍魎ど…

川を渡るときに思う事 お上りさんケンブン禄⑨

1 時間はもう間もなく十八時になろうかといった頃。僕たちはあの奇妙な形をしたアサヒのビアホールを目指して隅田川にかかる吾妻橋を歩いていた。薄く透明な風に吹かれて―― 橋に吹く風は水に洗われて街のそれよりずっと透き通っている――視線を遠く下流へ向け…

浅草、ル.ヴォワール お上りさんケンブン禄⑧

1 呼び込みのおじさんが声を上げる。 「さぁー今からナイツの出番ですよー」 って、そりゃ本当に呼び込むだけで、まったく味わいってもんが無い。呼び込みだって芸の内、「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。さあさあさあ」くらいの事は言ってほしいもんだ…

 道端に転がる歴史の残骸を見て回る 小六石の場合

1 つい先ごろやあ新年だおめでとうさんだのと、めいめい申し合わせて酒を呑み呑み アハハアハハなどと笑っていたら束の間、気が付けばもう盆を越して九月となりましたから、えー早いもので。光陰矢の如し・・月日の移り変わりと言うものは、あつという間で…

残暑に思う ② 昼

鎮守の森は昼下がり。この夏の、終わりに敗戦徒党の残党兵のような。僅かばかりの蝉の音が聴こえて。数週間前ではウンザリこしたこの声が、今にして何故か、愛おしいような勿体ないような。蝉の命は一週間ばかりだという。もう少ししたらこの声は聞かれない…

残暑に思う ① 夜

空には上弦の月。雲が動いて。妖しく風が吹くのは、何も嵐の前触れと、そう決まったものではない。こうやって平静、秋に差し掛かる夏の終わりのような日に、空はいつも慌てる。 ラム酒をソーダで割ってそれで一杯やって、心持もよく。それで興にかまけて誘わ…

夏休みと洒落っ混んで甥と出かけた

1 仕事や雑用に追われて、何もしないことをすることが出来ない。休みだと言ってあれこれ動くのはばかばかしいと、心底思う。本当だったら、休みの日くらいここぞと時間を無駄に贅沢に使いたい・・例えば一日中大昔にクリアしたドラクエ3を引っ張り出してき…

夏だから、原付バイクで北へ走った

1 街道を北へずっと上っている間中、向こう見える明石飛騨木曾と山々は、ようよう繁り鮮やかさのうちに心地よく・・・・言って50㏄ の原付バイクである。大型トラックは日本経済、流通の要は我也と、さも天下人。我が物顔で走り去り、その風にあおられ、…

浅草を見る お上りさんケンブン禄⑦

http://www.photock.jp/detail/tourarea/767/ 1 浅草駅のA4出口から地上へ出た。目的地は浅草演芸ホール。ほとんど見覚えのある景色、看板。これなら迷うことなく歩けるだろうと思うが、先の乗り換えの例もあるし、油断は禁物と、スマホを取り出して道順…

改札ですれ違う人々・・お上りさんケンブン禄⑤

*1 1 二人でミャンマービルの小瓶を三本・・・分け合って飲んだ。夜勤明けの頭に程よいアルコールが廻って、いい気分で会計を済ませる。 表へ出ると、懐かしい都会の暑さが。もっとも都内で暮らしている人には、五月の末、こんなもの暑いなんて思わないのだ…

ミャンマー料理を食べた お上りさんケンブン禄④

ミャンマーの町らしいです 写真素材 足成:ミャンマー より 1 世界が狭くなったと、どんなに言われても―時間を金で買う時代―東京ミャンマー間4497キロををひとっ跳びで移動するために費やす金額を稼ぎ出すために必要な時間は一体どれくらいなのだろうか…

再会、ミャンマー お上りさんケンブン禄③

1 十一時四十五分、改札前。人の出入りを漠然と眺めながらpaを待った。まめに連絡は取りあっているのだけれど、実際に会うのは三年ぶり。三年前と今と、僕自身はあまり変わったつもりが無いけれど、向こうはどうだろう?・・・そうだ、しまったな。せっか…