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酒の井戸

アルコールの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

己の恥を朗々と語る

日記 酒について 冴えない

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 ある日のことを実録形式で申し上げるしだいで御座います。

 

 ああ寒が染み入る。体の芯まで寒が染み入るから今日は燗酒にしようと、急いだ帰り道。夕間暮れの空が山の向こうまでずっと。果てなく伸びておりました。

 そんな空の下、せかせか歩いていると次第に、心内片隅から

 

「ほれ、あの綺麗な空を見てみお前さん、あの広く雄大なお空に比べて、あんたの心の如何にちっぽけなことか。家路?飛んで八分、歩いて十分。たかだか知れた距離じゃあないか。・・ゆっくり行こうジャン。楽勝ジャン」

 

 

 なんて、内なるユトリズムが頭をもたげて。

 「狭い日本、そんなに急いで何処行くの」ってそんな言葉が浮かびます。

 

 まあ、そうだわな。急いた所とて、人の足の進むこと。歩こうが、走ろうが、大差なしよ。せかせかしたって、ただ自分の気分が小さくなるだけで、つまらねえじゃねえか、それよりかは悠々自適に浮世雲よと・・そんな気分になりまして。

 一念に悠然悠然と心がけて歩くのですが、いかんせん寒い。とにかく寒い寒いと、山おろしが向かい風。身を切ります。鼻水が出ます。耳がかじかみます。

 

 もう五分と歩けば念じ念じた悠然も、到底力を失い

 

「寒いんだよこの野郎。ナンダ馬鹿野郎」

 

と、ビートの化身が頭をもたげる始末。

 

「あぁ?狭い日本?寒い日本だよ馬鹿野郎。何処行くのって家に決まってるじゃねえか。帰るんだよこの野郎」

 

なんて、ますます品の無い有様。人品骨柄、全くなっちゃおりません。それでもようやくたどり着きまして。酒だ酒だ燗酒だと騒ぐ心を抑えて、とりあえずシャワーへと。熱い湯を浴びて体も温まり。その頃には暖房も利いて部屋も暖かですから余裕が出てまいります。と、さあ儚い渡世の浮世雲、ゆるりといこうじゃねえか・・・なんて先の気分は何処吹く風。ビートの化身はたちまち退散。ご機嫌なもんでまたユトリズム。さあ燗をつけよう酒菜はめざしだと台所に立ちますと・・・・・・

 

 

 酒がねーでやんの。

 酒がねーでやんの。

 

 なんですかねこれ。

 

 

 昔、甲斐の国は恵林寺に回線和尚・・間違えた。快川さんね。快川和尚という偉い禅僧がおりまして。武田家滅亡の悲劇の際、織田方の手の者に囲まれ炎上する仏閣伽藍の中、阿鼻叫喚の声を横目にただ一人、泰然と「心頭滅却すれば火もまた涼し」とのお言葉を残し、見事御入滅されたという話しが御座いますが。

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 その時のあたしは心頭滅却とは全く対極の、心頭暴怒髪天と申しましょうか、いや怒り狂いまして、ね。

 冷静になって考えてみれば・・て冷静になるまでも無い一目瞭然な話なんすよ。一人所帯なんで買い物も何でも自分でしなけりゃならない。つまり、酒を切らしたのはあたしの責任なんですよ。誰のせいにも出来ない、明々白々とした・・・・

 

 なんですが、ですが。

 

 その時のあたしといえば、まあ我も忘れる心頭暴怒髪天状態。スーパーサイヤ人も裸足で逃げ出す・・そうですねぇスーパーサイヤ人換算で言うと、5くらいでしょうか。尻尾も生えるし、髪は伸びるし、ゴンさんだし・・・って漫画変わってますけど、まあ理性が利かない。

 

たしか、

 

「なんで、酒がねーんだよ。なんで酒が酒としてここに存在してねーんだよ。酒は酒としてここに当たり前に存在するべきだろーが。何で酒がねーんだよ。酒は酒として存在しとけよ。ただ、ここに存在してりゃ良いんだよ。ただ君、かくがあるが如し、君、あらんだよ。・・・なんだんだよ。わけワッカンネーよ」

 

 って、わけワッカンネーのはお前だと、・・・あ、俺か。サンドバックを叩こうとして、散々フルスイングで空打っているようなもんで。

 

 

なんとも、かんとも、なんなんだかなーって

 

かしこ