酒の井戸

アルコールの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

宅配便は、背中に潜む

 

 「ピーンポーン」

 

と、音が鳴った。

 

 あたしは、普段来客などない悲しい男やもめ。先達ては心寂しさから、うっかりドアを開けちまって、寒風吹きすさぶ睦月・・・一月の寒空の下、やったら熱量のこもったオバハン二人組みのアリガターイ某宗教団体へのお誘いを。

 

 神やら救いやらと。いや実際これを信仰することが出来れば、おそらく余計な悩みはたちまち吹っ飛び、随分と快活に生きることが出来るんだろうなーなんて。いえ目の前のお二人を眺めるにそう思えてくるほど、彼女たちは浮世の・・・あたしらが今生きて、じめじめと悩み苦しんでいる世迷いごとなんぞは、とうに超越してしまったかのようなエネルギーを感じるのでありますが。

 

もういっそ言ってしまいたい。

 

「入信?するする!それで万事楽チンなら、オッケーじゃん!!」

 

と。

 

 しかし悲しいかなあたしは、よっぽど前世に重い咎を背負ったか、はたまた先祖の因果があたしに報ったか、その生きていて生ずる悩み苦しみなんてものに、一等の愛着とおかしみを感じる性質でありまして・・まあ、これがあたしの生きる道つーか、業っつーか、まま宿命よおほほほほと・・・まま、そんな人間ですから故にそのオバハン連のアリガターイお説教も、またオモロと小一時間ほど聞いとって、塩梅を見計らって

 

「あたしとしてもあたしの宿命と対決している身であり、故にこの世の苦しみ一切を味わい笑い暮らさねばアカン。残念だが、あんたがたと同じ道を歩くことは出来ん。ああ悲しやわが友よ。さよなら。バイバイあるよ」

 

なんて、テキトーな断りを述べて、ドアを閉め、これに厳重な錠をからめ、酒を飲んでお笑い眺めてあはは、あははなんて笑って、そのまんま眠っていたら、翌日風邪を引きました。

 

あのよろし

 

・・・くない。

 

 寝込みましたよあたしは。

 

 

 故に、あの呼び鈴てのには、アタクシ学習いたしまして最近気を使って、警戒しているのでありますが・・それで話が上に戻って。

 

 普段なら、シカト決め込むところの「ピンポン」ですが二日ほど前に、アマゾンで本を三冊ほど頼んどいたのであります。きっとそれだなと、「はーい」と・・しっかしなんですかな、通信販売ってのは、この物が届いた瞬間てぇ奴が一等心踊り、血が沸きてもんですが・・実際其処がピークで。品物を手にしてドアを閉めた瞬間から、それまでのワクワク感から来る反動でしょうか。なんだかすこぶる達観しちまって、妙に心が冷める。ふーんって感じで、品物をぽんとそこらに投げて二三日開封しないってことも、多々有るんですが、あたしだけなんですかね?よー分かりませんが。

 

 まあ、いいや。

 

閑話休題

 

 えーと、だから、その「ピンポーン」が鳴った時は、いわばテンションマックスで、「はーい」と返事をして、ドアを開けたと。

 

 誰もいねえでやんの。

 

 見えるのは先達て降った雪の積もったのと、其処からわずかにのぞく枯れ草。びゅーびゅーと、寒風が部屋に差し入って、誰もいない。あたしゃ、たまさか変な、あやかしでも覗いちまったんかと思って・・丁度十八時過ぎあたり。黄昏時の、見えるものは何もかも霞んで覚束ない時分でありますから、その宙ぶらりんに放置された空間を五秒ほど眺めていたんですが。

 

 しかたねえ閉めるかと思った矢先、ドアの影からニュッと出た。

 

「宅配便です」

 

とな。

 

 なんだい。一人時間差かよ。なんだい。

 

しっかし、何故、ドアの脇に隠れるかな。普通に正面にドアの正面に立っていれば良いじゃないか。よしんば、立ち位置を間違えたとしても。ん、ならさ。さっと出てこいよ。・・・いや、良いよ、もう百歩譲るよ。百歩譲って、出て来れないなりの理由が有ったかも知れん。と考慮しよう。考えよう。荷物を持って呼び鈴を押したは良いが、押してみて初めてこの荷物が本当にこの人の配達物なのか、急に不安になった・・故に確認に手間取ったとかさ。いいよ、しょうがない。そういう事も、有るかも知れん。でもさ、返事っくらいしようぜって思うんだよね。

 

「はーいただいま」

 

とか、

 

「ちょいとお待ちを」

 

でも何でも良いよ。

 

返事くらいは・・・

 

いや、もう良いよ。二百歩くらい譲って、最早返事すら覚束ないくらいあせっていた・・・としよう、

 

 

吐息くらい漏らせよ

 

 

あたくし、全然、その開けたドアの脇に人がいるとは、全く、これっぱかしも想像できないくらいの、隠密行動を喰らいました。

 

 

 はい、お客さんとこ来ました。呼び鈴を押しました。急にこの荷物がお客さんのものか不安になりました。ちょっとドア影に隠れました。確認しようと伝票を見ようとしました。「はーい」って返事、ドアが開いた。焦るでしょう。普通焦って、ちょっと心拍数上がるでしょう。呼吸が乱れるでしょう。

 

 ・・・・なんで、気配すら消してるんだよ。

 

 本当に、誰もいないと思ったよ。

 

 なんなんだよ。

 

 絶の達人か?ゴンフリークスか?俺はヒソカのように驚いた顔でもすればよかったんか?

 

にゅっと、現れたよね君は。

 

僕にはヒソカほどの遊び心はないんだぜ。

 

 にたにた笑いながら、「野生動物の気配の消し方に似ている」とかいう余裕は、これっぱかしかも無いのよ。

 

そもそも、ナンバリングバッジ持ってない。

 

 

うーん。

 

・・・・・

 

文章の落とし所がよく分からなくなったので、唐突にこの文章は終了します。

 

あのよろし

 

・・・だから、よろしくないって!!