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酒の井戸

アルコールの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

改札ですれ違う人々・・お上りさんケンブン禄⑤

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 二人でミャンマービルの小瓶を三本・・・分け合って飲んだ。夜勤明けの頭に程よいアルコールが廻って、いい気分で会計を済ませる。

 表へ出ると、懐かしい都会の暑さが。もっとも都内で暮らしている人には、五月の末、こんなもの暑いなんて思わないのだろうけど、高原から久々に上京した僕は、さすがは東京だななんて妙な感心を覚えて、また駅へと来た道を歩き出した。

 

 もうしばらくしたらこの暑さも、感心を通り越して呆れるくらいの熱を帯びる。僕だってかつて此処に居たんだ。だからそのくらい知っている。もうずっと昔、クーラーも扇風機もない六畳の和室で死にそうな思いをしてひと夏を乗り切った後には、「人間って意外と死なないものなんだな」と、そんなことを思った。若かったから大丈夫だったのかもしれない。今ならたぶん無理だろう。きっと今なら数日と経たないうちに異臭があたりを覆って、近所づきあいをしない僕を、ハンカチで鼻を覆った区の役人が発見する事になる・・・。

 

 最後の五月晴れは、もう夏の匂いを。青空を見上げると墓標のようなビル群が向こうに。サニーデイサービスが『東京』というアルバムを発表したのは1996年の事。

 僕は今高田馬場の駅へ向かって歩きながら、そのアルバムの中に入っている『白い恋人』という曲の歌詞を口の中で何度も転がして遊んでいた。

 


サニーデイ・サービス - 白い恋人

  

 それから一度、セブンイレブンでトイレ休憩をして、駅についた。

 

 2

 

 高田馬場から上野へ。

 

 みんながパスモだかスイカだかと、すいすい改札をくぐる間を練って切符売場へ行く。いちいち路線図を確認して目的の駅を探して、料金を調べる。財布から小銭をちょぼちょぼ取り出して・・・僕はせっかちなので機械が小銭を認識する前に目的の金額ボタンを押してしまう。するとややあって機械が認識できないと判断した小銭をチャランとはじき、ご丁寧に「行き先金額を入れてください」と、催促するアナウンスが流れる仕組み。みんながパスモだスイカだとすいすいやってる中一人、「行き先金額を」とせかされて舌打ちをする。

 

 「ちっ」

 

 また財布からまた財布から別の小銭を取り出して入れ、はじかれた小銭を回収して財布に入れる。

 

 「ちっ」

 

 舌打ち2回目。

 

 「どいつもこいつもすいすいしやがって・・・」

 

 っと、心の中で流れるような人波を呪いながら、あたかも都会人を装ってすいすいと改札を通り抜けようと並ぶと、そこで初めて電子マネー専用の改札が増えて、吟味しないと切符で通れないという理不尽に気が付く。切符用は大東京では隅に追いやられているのだ。

 

 選びに選んで3回目の舌打ちもそこここに向こう岸へ行こうと思うと、双方向改札、向こうから同じ境遇のおばはんが切符を通してこっちへやって来た。

 

 イラッとした?

 

 しませんよ。

 

 むしろ、ホノルル空港すれすれ・・・つまりあのでっかい花の首輪とアッツイ抱擁と濃厚なキッスをそのおばさんに捧げたくなるくらい、「オオ我同志よ!!」てな気分で彼女を迎えると、明らかにイライラしている。そりゃそうでしょーね。やっぱ戸惑いますよね。こんなご婦人に抱擁でもかましたもんなら、そく変態容疑で警察署ツアー御一行様とpaにヒンシュク買い捲ることこの上なしと、即座に判断した僕は、ハワイアンなカラッとした笑みを即座に東京流のこれから来るだろう梅雨らしいじめっとした笑みに切り替えて、彼女の動線を十二分に確保して譲ったのち、さあと、ようよう改札をくぐったのでありました。

 

(なお、この作業は今後電車に乗るたびに何度と繰り返される)

*1:この頃がむしろなじみある感じがします