仕事中、ポケットに入れていたスマホが震えて、取り出してみると・・なんだ天気速報だった。「関東近県梅雨入り」とある。スマホをまたポケットへ入れて仕事へ戻った。
仕事を終えて私服に着替え表へ出ると、なるほど雨が降っていた。傘は持っていない。
「・・梅雨か」
と呟いて空を見上げる。風は無い。地面に溜まった水たまりに、雨粒が上から上から垂直に落ちて波紋を作っている。
ぽたぽた。
「止みそうにも無いな」
諦めて少し濡れながら車まで走った。
雨粒を受けて色の濃くなった群青色の上着を助手席に投げて。下のTシャツにも少しにじんでいるな。肩をなでてそう思った。少しため息。エンジンをかけた。フロントガラスにも雨粒が打ってしずくになって落ちていく。前が見えない。ワイパーのスイッチを入れると、にじり寄ってたちまち綺麗にした。
帰り道は田園が続く田舎道で。古い石仏が方々に見える。いや仏だけでは無い・・神もいるし、鎮魂碑もあるのだ。・・とにかく石碑が多い。
2020年6月、現在。今我々が世界的に共有している悪夢の中でこの仏や神々を見る。恐らくこれらを造った人の内の何人かは、我々が現在受けている災い以上の渦中にあって、その災いからの脱却を祈り、石に刃を当てたに違いない。だが作り人の記録なぞとうに無く彼の人の心中を計ろうなぞ、於いては言わんや。
もろもろの人々の祈り、願いが苔むして、野草の中に埋もれている。あたかも自然発生的に、ずっと昔からそこに有ったかのような顔でそうやって佇んでいる。
人知を持って自然物を超克しようと格闘した彼の外来文明知の恩恵に今預かり暮らしながら、そもそも論として、全く違った発想の文明を出発点にして発展してきた先祖の経緯にも思いをはせざるを得ない。
仕事中、ポケットに入れていたスマホが震えて、取り出してみると・・なんだ天気速報だった。「関東近県梅雨入り」とある。スマホをまたポケットへ入れて仕事へ戻った。
仕事を終えて私服に着替え表へ出ると、なるほど雨が降っていた。傘は持っていない。
「・・梅雨か」
と呟いて空を見上げる。風は無い。地面に溜まった水たまりに、雨粒が上から上から垂直に落ちて波紋を作っている。
ぽたぽた。
「止みそうにも無いな」
諦めて少し濡れながら車まで走った。
雨粒を受けて色の濃くなった群青色の上着を助手席に投げて。下のTシャツにも少しにじんでいるな。肩をなでてそう思った。少しため息。エンジンをかけた。フロントガラスにも雨粒が打ってしずくになって落ちていく。前が見えない。ワイパーのスイッチを入れると、にじり寄ってたちまち綺麗にした。
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帰り道は田園が続く田舎道で。古い石仏が方々に見える。いや仏だけでは無い・・神もいるし、鎮魂碑もあるのだ。・・とにかく石碑が多い。
2020年6月、現在。今我々が世界的に共有している悪夢の中でこの仏や神々を見る。恐らくこれらを作った人のうち誰かは、我々が現在受けている災い以上の渦中にあって、その災いからの脱却を祈り、石に刃を当てたに違いない。だが作り人の記録は残らない。彼の人の心中を計ろうなぞ、於いては言わんや。・・・知る、知れる由も無い。
もろもろの人々の祈り、願いが苔むして、野草の中に埋もれている。あたかも自然発生的に、ずっと昔からそこに有ったかのような顔でそうやって佇んでいる。
人知を持って自然物を超克しようと格闘した彼の外来文明知の恩恵に今預かり暮らしながら、そもそも論として、全く違った発想の文明を出発点にして発展してきた先祖の経緯にも思いをはせざるを得ない。