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酒の井戸

アルコールの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

宇宙的混沌を湛えた自室に戻ったのこと

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 1

 

 どうも、無沙汰さんで御座いますが、無事引越しがこれあい済みまして、と。申しましても距離にして約三十キロほどを西へ。住み慣れた実家へ戻っただけの事ですが、しっかしいやはや。久々に入ったあたしの部屋は、見事物置と化していて・・・。

 

 家族がみな各々

 

 「ま、廃品にだ出すんも億劫だし、とりあえず空いてる此処に放りこんどきゃオッケーじゃん。ま、こんど暇ん時でも、片付けっからよー」

 

 なんて軽いノリで。

 そいでそのまんま。当人の記憶からは、いずれ消え去り・・・・山林に遺棄されるごみ問題と同じですな。空き缶のポイ捨てと同じ。誰が最初にやったか。一つ物が捨てられると、皆、ま、いいか・・なんて罪悪感のハードルが下がりますから、それ続け。あれよあれよと・・・まあ、溜まった溜まった。猿股の穴が開いたの、動かない時計、縁もゆかりも無い誰だかの結婚式の集合写真・・・ご丁寧に写真館で作成された、パネル入りのやつ。

 

 これ、畢竟

 

 魔境・・・・

 

 いやん。

 

 ・・・まんず持ち帰った荷物を入れるのだけで、随分な骨折りをと。しかし億劫がったっていずれ困るのは自分ですから、まーしゃーあんめい。自分で自分の尻を引っぱたいて、今週末は掃除であります。

 

 

 しっかし、結婚式の写真は無いよなー。

 

 猿股だの時計なんぞは、別に取った手で右から左へゴミにすりゃあようござんすけれど、何処の誰かは存じませんが、いずこかの某方ハンのかかる生涯における幸せの瞬間の御記録を、無下にゴミとするってのは、まま、ささやかなれど人の心として、いささかの・・・なんですかなー、罪悪感ってんですか?咎を覚える。

 

 一応、家族には聞いて回ったんですがね。皆口をそろえて「あたしゃ知らん」。

 一人、都内に所帯を持つ末の弟が居りますゆえ、まあ、きゃつの伝ではないかと、想像いたしますがな。しっかし、この件に関しては家族は皆嘘をついている。おそらく家族中皆が皆、件ささやかな罪悪感にさいなまれ、右へ右へと。回りまわって、あたしが最終処理をすることになった・・だろうと。

 

 捨てますけどね。よーしゃなく。あすた、ゴミの火に、燃え盛る業火にさらされお前の幸福はよどみゆがみ、そして最後は綺麗な灰となり落ちるであろう。南無阿弥陀仏

 って、念仏でも唱えてあげますよ。かのカップルに?・・いえ、こんな事をせなアカンあたしの生まれの悪さにです。

 

 

 混沌とした世界、宇宙の一等混沌としたこのあたしの部屋は。・・まあこれ自体が全宇宙の雛形のような体を成して、これはこれで面白いっちゃ面白いんだが。混沌の中に身を置くってのは、存外体力を必要とするもので。

 

 あたしは若い時分この混沌てモノが、一等高尚なモノのように思えた。決してキレイではないが、大げさな物言いをすれば、「美」というものすら、無秩序な混沌の中に見出し・・・大昔東京は浅草橋に住んでいたことがあるのですが、朝焼けの照らす灰色の秋葉原を意味も無くぶらついていた時。路地裏に酩酊状態で路上に横たわる中年オカマのスカートがめくれ剛毛が茂る太ももまでの上げた網タイツ姿をさらす向こうから、アスファルトを軽く踏む軍靴の音に響かせ旧軍将校のコスプレをした男が。

 青白い朝の匂い煙る高層ビル群の合間から差し込める光線を、背に受け洋々と向かってくるなんて・・・あたしはあの時の、あの瞬間に見た景色が絵として脳裏に残り、いまだに忘れることが出来ない。

 

 全く醜いが、しかし美とは、存外こういうものかも知れん。宇宙とは、真理とは、芸術とは、無秩序に散乱しアメーバのように増殖し続ける混沌ではないだろうか・・・となぜかふと思ってしまったので。

 

 

 時あたかも、石原新太郎都知事の世。浄化作戦と呼ばれた政策に、街はやがて綺麗になり、整理整頓が行き届き、あたしは、まったくツマラナイ世の中になったなと思いながら、やがて東京を去ったのでありますが。しっかし、年を重ねて、なんとなく分かった。混沌に身を寄せるのには、本当に体力が必要になる。あたしはもう年をとってしまって、昔ほど、世界中のあまたに付き合えるほどの体力も無い。自分の見まわせる範囲内だけでもとりあえず分かりやすくしとこうぜ。・・ってノリを・・・都知事閣下の心意気を汲めんでもないと、思えるようになったあたしは・・・いや、あたしも年をとった。

 

 世界は最初、混沌とした分別の無い泥のようなものであった。イザナギイザナミの両神がこれに矛をつき切り分け、整理整頓をしたので、ようやっと世界は世界としての実相を持つにいたったのである・・・てえ感じで。まあなんとかせんといかん。

 

 4

 

 さてと、昨日は、はあ、明日その旧屋の立ち退きってんで、なじみの飲み屋にちょいと顔出しって、

 

「お世話になりました」

 

なんぞ挨拶と。

 

したら

 

「そうかい、じゃあ寂しくなるねえ。まま、今日はおごりだ。呑みねえ呑みねえ」

 

みたいな。

 

 

いやあ、散々ご馳走になって・・・

 

 いえ、一応断っておきますけれどね、ハナからそうなる算段で参ったわけじゃあないですよ・・あすこの大将は義理人情に厚いから今行けばきっと・・とか、そんなヨコシマな・・ねえ。

 

 ・・・・・まあ、動機はどうあれ、酒をたらふくいただいて。いやあ、残りますな。御酒はありがたいが、二日酔いは飲んだおいらより、飲ませた筋を恨むってのが酒飲みの嫌らしいところですが。

 

「まあ、まったく・・うう・・おめーはナンダって俺にこんなに酒を飲ませるかね」

 

なんて恨み語とを言いたくなるほどに、二日酔いのつらさてのは、身に堪えますなぁ。

 

まあ、またのんべんだらりとマイペースに、世迷いごとを吐き更新いたしますんで、どうぞお付き合いのほどを。

 

 

追記、

 

この文章は先週の金曜日に書き上げたものですが、ネット回線の接続にてこずって、更新が遅れました。週末をまたいだ今なお、部屋は変わらず混沌としたままであります。