晩秋から初冬に撮った写真と雑感
1
朝起きると霜が降りていた。これで秋の終わり。
それが冬の始まり。鼻先が少し冷たい。しびれるようにヒリヒリする。こうやってだんだんと空気の線が細くなってゆく。そしてあと数日もすれば鼻先がしびれるじゃ済まなくなる。カミソリのように鋭くなるから。
気まぐれな早起きで、カメラをぶら下げて近くの森をぶらついた。
東からさす木漏れ日。枝からを縫って漏れる光が細く鋭い。
・・鋭くって・・それでか地面に浮かぶ陰は深い。
・・浮かぶ??
・・沈むかも??
こうなると言語表現として、何が適切なのかよく得わからんくなる。光線の強弱によって陰はまるで浮かんだかのようにそこに現れるが、その存在自体は闇であり沈んでゆく。
・・朝日なのに沈むとは、これいかに?
いや、それが、それこそが冬の始まりである。
光線とその深さを物語るところの陰・闇・・・ それは、まるで透き通ったガラス板に刃先鋭い彫刻刀をもってスッと削り込んだかのような輪郭で。
2
吐き出す息の白さを愛でながら、森の中を散策した。羽織っているのは米軍の払い下げ品。M65。深緑系のカーキ色のコート。襟を立てる。北風が冷たい。分けて入る枯れ葉、枯れ枝。踏むたびに足に乾いた感触が伝わって、耳に枯れ枝や枯れ葉の砕ける音が聞こえた。
枯れ枝枯れ葉、地面に落ちて積もるそれらを枯れ色・・と十把一絡げに片付けてしまえば平静踏みにじるだけの邪魔な落ち葉に過ぎないが、こうしてみると落ち葉は落ち葉でなかなかに表情をかえる。霜の降りた枯れ葉なぞは、なかなかに雄弁なアクターだ。枯れ色に身を染めた老婆のようで、見方によっては宝石をまとった女優のような表情を見せる。また、角度によっては全く逆の演技に騙されてしまうファインダー越しの僕だったりもする。