コトバ 風物 ジッタイ

ゲンショウの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

〈信州〉諏訪湖夜景を一望する立石公園展望台の美しさを可能な限り撮ってみる。

立石公園展望台


1.
立石公園は高台にある。

 

 

 立石公園から眺める景色を人々は絶景だと言う。

 

 なぜなのか。

 

 それは「標高934 M に佇み、雄大諏訪湖と美しいアルプス連峰の眺めがパノラマで楽しめる展望公園」だからである。

 

 だってそう公式に書いてある。

 

 「諏訪湖に沈む夕日や夜景の鑑賞スポットとしても知られ。夜は美しい夜景がロマンチックなムード引き立てます」だって。故に此所は信州サンセットポイント100選、新日本三大夜景、夜景百選など数々の栄誉に・・・まあなんててんこもり。・・選ばれている。ならばそれならば。さぞやキラキラしたカップル達でひしめいていて。まあ僕なんかがそんなところに迷い入った日にゃ雰囲気ぶち壊しにコレ相違なく。おっそろしく白い目で見られるんだろうな等と覚悟しながら国道から右に折れ登る峠の坂道をノロノロと進んだ 。

 

古里が見えます



 

 運転に苦手意識がある僕は日頃からあまりスピードを出すなんてことはしないのだが、それに重ねて重度の高所恐怖症で。だから眼下に広がる世界がいよいよ遠ざかってゆく この峠の上り坂というのはまあ考えただけでもぞっとしない代物で・・ひとつアクセルでも踏み違えたらこの谷から真っ逆さまだななんて杞憂にとらわれて・・故に牛歩も牛歩のノロノロ運転 。それで上に登ったらカップルの楽園と来た日にゃ空気破壊の罪状に問われることを間違いなくここは大泥棒ホッツェンプロッツよろしく 撮るものだけ撮って早々に退散するのが吉と考えていた。

 

 ・・・のだが。

立石公園展望台



2.立石公園展望台はカップルの楽園でも無かった。

 しかしえっちらおっちら、ようやっと実際上に上がってみると暴走族のようなバイク集団がいて、しかもこれがすこぶるマナーがよく一部タバコは吸ってはいるが集団の奥に隠れ自販機の光に浮かぶ煙でそう分かる謙虚さ。ポイ捨てなんか絶対しないような輩どもで。 皆ヘルメットをかぶったまま熱い缶コーヒーなんか飲んで話しているだけの人畜無害っっぷり。

 

 それから見晴らしのいい広場には大学生と思わしき男性の二人組がぽつんと。 

 

ビューポイントだ夜景だなんてキーワードから、さぞかやカップル連のたまり場に違いないなんて先入観に囚われていた僕は、最初彼らをゲイのカップルだななんてトンデモナイ勘違いしてしまったのだけど・・。

 いや、しかし実際その会話を漏れ聞くに、聞きかじったような世界情勢から始まり銃を撃ってみたいという話になりどこそこの国に行けば銃が打てるらしいと言う話から、最終的には今売れているアイドルグループの自分が贔屓している誰それの話などと・・まあゲイカップルというよりはただの世間知らずの今風オタクの若者二人といった様相で・・いやはやなんでこんな峠の上の高い所まで来てそんな話をしているのだい?と問いかけたくなるような平々凡々な若い会話だった。 



 

 暗がりにて果たしてその正体はつかめないが、そんな漏れ聞くオタ会話を BGM に三脚をセットしカメラを 設えファインダーを覗く。構図を調整しシャッターボタンを押す 。

 

 なるほど景色は綺麗だった。

 

立石公園展望台

 ビル群の人工光が華やかに輝きそれを漆黒の湖面に写し揺らいでいる。

 吸い込まれてゆく。深い黒。沈む。消える。

 光線の誕生と消滅の瞬間を看取るような気分でファインダーの隅々をみる。

 

 人工光の綺麗な場所というのは全国数多とあるだろう。それこそ市街地の数ほどに。しかし、やはりこの自然物である湖の周りに・・その水運を営みの要として・・波形的に発展したこの諏訪地方の夜景は人の発展の営みがダイレクトに感じられるようでなかなかに感慨深い。

 

 ビューポイントと 讃えられるだけのことはあるなと思った。 

 

 3. 恋人達の居なくなった理由

 いくつかの構図を撮るために 上の作業を繰り返している間。いつの間にか社会人カップルと思わしき2人組が来たが、むしろ自分たちこそが場違いと思ったのか早々に帰ってしまった。それはさながら魔の三角海域に迷い込んだアヴェンジャ雷撃機のように、頭ぐらぐら、冷や汗タラタラ。目を回しての退散だったに違いない。その間中ももちろんオタクたちの長談義は続いていた。彼らはいつだって不合理なことに関しては答えを求めたがった。聞き耳を立てずとも十分に聞こえるほどの大声で・・・。そして背後に蠢くマナーの良い暴走族は相変わらずひそひそ声でここに居ない仲間内の誰かの噂話を・・。

 

 やたらマナーの良い暴走族風のバイク集団→大声で推し拳銃から推しアイドル活動の近況報告をしあう外観不確かなおたくコンビ→闇に紛れてなんか作業してるっぽい撮影者(影)のトライアングル構図がこの立石公園の場の磁場を支配しまくっていて・・僕は僕が その社会人カップル見とって場違いだと思わせる構成要素の一部であることに苦笑いをしながら 大どろぼうホッツェンプロッツ式の「撮れるのなら撮れるだけ取っておこう」の精神で随分 長居をした。季節外れのネイビーロングコートが重ったるく厚ぼったかった。

 

 

多分これのせいだろう。

そのカップ達にはすまんかった。

 

今度は夕景を撮りに行きたい。

 

立石公園展望台

 

公式の案内

 

www.city.suwa.lg.jp

 

 

撮影機材

 

 

 

 

 

お題「うちの自慢スポット」