酒の井戸

アルコールの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

面白い落語百選 -ねぎまの殿様12

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 今日は夜勤で。

 今しがたハケてって・・・何もこんな丑三つ時に開放するこたぁ無いじゃないかと、

 

「帰ったって、何も出来やしねーよ」

 

と、

 

同僚は皆口々に文句を。・・が、あたしは一刻でも早く酒にありつきたいモンですから、その都度気の無い相槌を打ちながら心内ではほくそ笑んでおります。

 

 終業の鐘が鳴って。

 

 表へ出ると、草木も眠るとは申しますが、しっかしこの時分の此処いらは・・田舎ですゆえ音すらも眠っているのでしょうか。深く静まり返って。それでも職場の周りはまだ街灯が点り、幾ばかの光が道を照らしますが、しばらく行くともう辺りは、街灯も無いのであります。じっと沈むようなアスファルトの黒さが、じんわりと。染み付くように辺り一面の光を、吸収してしまったのではないかと思えるくらい、光が失われ音も光も無い・・・・いわば形の無い世界で。

 

 あたしは、あたしすら分からない。

 そんな道を歩きます。

 

 そうやって帰ってともる家の灯を浴びた時の嬉しさといえば、もうそりゃあ、なんともいえないモノで。血肉蘇り、実体がここに再び浮かび・・あたしはあたしとして、実感としてあたしを取り戻すのでありますが・・・

 故に「はー」とため息をついて、暖房を入れて、やかんに火を当てて湯を沸かします。今日は薩摩白波をお湯割で。梅を落とします。こうやってダラダラ酒を呑み呑み言葉を書き散らかすってのも、まあなんとも言えない喜び。

 

「どうも、毎度ご面倒様で御座います」

 

なんて、そんな台詞は時代じゃないが、読んでくだすってありがとう御座います。

 

 

と、前口上がすんだところで、前回の続き。

 

 

続きったって、前回たってアータ。あたしが別のことにかまけてなんかやってる内に、まあ開いた開いた、随分と日にちが開いたもんだわ。この『ねぎまの殿様』に関しては、皆々様、噺の筋なんぞ当然忘れておりましょう・・てか、あたしが一等忘れちまった。

 

 チョイとおさらいを。

 

 

前回までのあらすじ

 

 

見事な雪を見て、雪見にと三太夫をつれづれに馬掛けと洒落込む。昼時だったので空腹を覚えていた殿様は上野広小路辺りまで来て、香った珍妙な匂いに引かれ、導かれるまま煮売り酒屋の縄のれんをくぐる。そこで食したのが「ねぎま」なる物。

 丁稚の小僧さんは江戸っ子だからこれをつづめて「にゃあ」と発したところ、殿様はこれをそのまま「にゃあ」なる物と覚えて帰ってしまった。

 後日、昼食のお好みを伺いに上がった料理番留太夫に、殿様はにゃあが食べたいと言う。それを聞いた留太夫ギョッとして、たまさか猫でも食するおつまりか・・と悩んでいたところ通りがかった三太夫に、「にゃあとはねぎまのこと」と教えられ、ほっと一安心。

 

とこんな感じでした。

 

 

前回は、こちら。

 

 

 

ytugatakewo.hatenadiary.com

 

 さて、にゃあが何か分かった留太夫は、おおカタジケナイ。ありがとサンキュー心の友よってな塩梅で三太夫さんに謝辞を述べ、魚河岸から鮪を取り寄せる大根河岸から本場岩槻の葱を買ってくる。

 

 魚河岸ってのは聞きますが、大根河岸ってのは今時分じゃ随分耳なじみが御座いませんな。中央区京橋3-4に「京橋大根河岸青物市場跡」という碑が残っております。

 今は中央通と高速道路の交点の脇となっておりますが、昭和三十年に埋め立てられるまで此処には京橋川という川が流れておりました。

 自動車なんぞ無い時代ですから、当時の運輸網のトップは船でありまして、「河岸」というのは読んで文字のごとく岸辺、船着場で御座います。船着場に卸し立ての品を広げ市を開いたので、此れを「河岸」と呼ぶのでありますが、

 

 しかし、これは恐らく非常事態だったから・・いきなりねぎまが食べたいとな。言われて驚き、桃の木山椒の・・うーん、ちと苦しいか。とにかくいきなり言われたから、この、大根河岸、青果市場に買いにやったので、普段はどうもこの屋敷を構える、いわば殿様と呼ばれる階級の方々は、江戸近隣の農家と直接契約を結び、野菜なんぞを卸してもらっていたようです。てか、物々交換・・・・

 

 物々交換て、じゃあ野菜と何を交換するのかってぇ話しですが、当ブログはお上品をモットーに運営してい増す故にチョイと書きづらいのだが・・・

 

 えー。

 

 人間て、生きていりゃあベッピンさんでも・・・小声になりますが不細工の方でも・・はげでもデブでも、ジャニーズでも学者さんでもおバカサンでも・・・おほほ、お食事中の方には大変、おほほ失礼仕りますが、・・・あの、人ってのは皆誰でも糞尿を垂れますでしょ。これがいい肥え、肥料になるわけでして。しかもまあ、今時分の観点から見れば半ば迷信じみたもので御座いますが、

 

「良い物を食ってる人の糞尿のが、良い肥えになる。野菜の発育が良い」

 

なんて事が、言われておってですな。高貴な方、お武家さんでも殿様の垂れる糞尿ってのは、江戸近隣の農家の方は皆欲しがった。結構倍率高かったみたいですよ。そして、それの代価として出来た野菜を持ってくるなんて。非常に高度な、糞尿再利用の、現代社会真っ青な、いわば此れ、永久機関に限りなく近いリサイクルシステムでして、なかなか感心するところでありますが。

 

 そういった塩梅で、要するに自社との契約農家みたいな話になりますな。お米ですとか、普段常備している野菜なんぞは、それで大抵まかなえた。またこの殿様てぇ方の敷地は大変広うございますから、開いた敷地を使って菜園を営むなんて、現代でもそういった文化を見かけますな。マンションのベランダでプチ菜園なんぞと。まあその本式と申しますか、いやはや、おまんとこは、そりゃプチじゃねえだろその規模は・・なんて。敷地が拾う御座いますから。

 

 もう気がつきゃ・・・一昔前と、間も無くそうなりますな。いやはや時の経つのは早いもので御座いますが、2008年に大河ドラマで『篤姫』なんてのがやっておりまして、大変人気を博した。篤姫役の宮崎あおいさんが非常にチャーミングで、好演と。あたしも観ておりましたが、面白かったです。

 この篤姫の旦那さん、十三代将軍徳川家定公って方が、この家庭菜園ってのに非常にご熱心な方で・・・いや、家庭菜園ったって規模が違いますからね。江戸城ですから、この江戸城の空いた敷地に野菜を植えてそれを食したなんて記録が残っておりますが・・・

 

 しかしながら当然、今も昔も人の心は今時分とそう大層無いもので・・・その当時もブランドってのが御座います。江戸ってのは飽食の文化でして、まあ美味いモンが何処其処にあると。そういった噂が立つと皆食いたがりまして、全国各地のブランド野菜が江戸へ集められる。それが先にあげた大根河岸て所に集まるわけなんで御座います。

 

葱は、本場岩槻産地直送だとな。

 

 さあ、そういった塩梅で集めた食材を、料理方はコレ。殿様が召し上がるものですからな。・・・いろいろ気を使います。

 鮪は血合いだの骨周りなんぞは全部捨てちまって、たまさか生じゃヤバイからと、いったん蒸篭で蒸しあげます。葱もまた十分に茹でて・・とそれを鍋に繕って、味付けを済ませて殿様に献上・・と、先の煮売り酒屋の寸法レシピとは随分違いますな。

 

 留太夫、かしこみかしこみ

 

「こちらが、にゃあで御座います」

 

と、殿の下へ献上仕るなんて段で、続きはまた次回へ。

 

しっかし、ブログってのは、この記事を上げるタイミングが、一等難しゅう御座いますな。今回は糞尿糞尿と、まあ不快文字を書きまくっちまったんで、・・・くっくっく。気を使います。皆々様の夕食時を・・・狙いまして、夕方ぐらいの、道を歩くと台所の匂いがぷんと香る

 

「ああ、あそこん家は今晩カレーか」

 

 見たいな、たまさか郷愁を誘うお袋サンよ・・てなタイミングで、投稿したいと思う所存で御座います。

 

ではでは。

あしからず