酒の井戸

アルコールの海に溺れながら考える世界のいろいろな出来事。または箱庭的な自分のこと。

入院顛末記

 

  えー先だっては、カカァがお台所に残すメモ書き、走り書きの如き性急な。

 

 「一週間ほど入院します」

 

 なんてぇのはしっかし実際。

 

 用件のみが伝わって、んで結局肝心要なところはなんのこっちゃわからん・・といった塩梅の更新で御座いましたが・・それから五日ですか。おかげさまで一昨日無事退院いたしまして。方々色々な方から温かいお言葉を頂いたり、心の淵わずかながらでも、こう気に留めて頂けたことが非常にありがたく。夜六人部屋の病室で、僅かカーテン一枚に仕切られたあたしのベッドから漏れる感涙が故のすすり音、泣き音を聞きつけた向かいのハチ公こと清水八之助何某なるソコツ者があたしの病状をよっぽど悪いと勘違いしたか、始終他の患者さんより何故か三倍マシに丁寧親切で、これがアタシとしては妙に心地悪い・・といった塩梅の日々でございました。

 

 2

 

 さて、と。

 

 えーそいで、では肝心の「なぜ、何ゆえに、どうあって入院したか?」と言う事でありますが。

 

 「酔うたが故の千鳥足で、足を踏み外して斜面を数十メートル滑落した」

 

 という、全く、ホントに馬鹿馬鹿しい理由であります故な。まったく、心配して頂くのがまっごと心苦しかったです。

 

 3

 

 うちの近所てか、あたしが子供の頃から歩き慣れてる(通学路にもしていた)道ってのが、いわゆる山道で。これが舗装もされていない・・・当然蛍光灯だのと言った人工光の類など無い代物なのであります。 そこを、まあ言っても歩きなれてる道ですから、よいよいと夜の朧な月明りと己の慣れた感を頼りに歩いておったら、どこかで目算を誤ったんでしょうな。ざっと先に出した右に踏む場所が無く。そこから、いやその下は地獄の淵の底の底。一気に体全体で転げ落ちました。何メートルくらい落ちたんでしょうかな。ちょいと分かりませんが。どこかで靴を無くしました。一番下に落ち着いて、五体の痛みに嘆きながら脱力して。そいで、もうその場で寝てしまえばいいとも思ったのですが、十二月の山は酷く冷たく、「ここで寝たらまず死ぬな」と、思ったので。

 

 靴を探そうと言っても、探せるはずがありません。あたしの履いていたドクターマーチンは黒塗りで、もうここは山の奥の奥。月光も届かぬ淵のそのさらに淵。仕方なしに裸足のまま両手と両足四肢を使って、獣か畜生の様に身をやつしてもその山の斜面を這い上がり、そいで何とか道にたどり着き、そこをまたふらふら行脚で辿ります。裸足に落ち枝や石がまあ痛く。もう何と言うか、我が身の業の深さが身に染みるという。俺はなんでこんな事やってるんだろ?なんて、前世からの業、己の因果を恨めしく考えたりもするんですが、まさに因果なんですよね。

 

酔った(因)

 

こけた(果)

 

飲みすぎたが故に千鳥足が故にコケタが故に滑ったが故に靴がなくなったが故に裸足が故に足が痛い。

 

 

 前世とかかんけーない。全部今世でせつめーがつく。

 

 

 まったく馬鹿馬鹿しい。

 

 

 

と、まあそんなんで家に帰りました。

 

転落して、足が痛いなーくらいのノリで、それよりも裸足で帰った足裏のが痛いよって布団にもぐって、やあ寝て。そいで起きて、まあ午後十三時半ぐらいか。見てびっくり。布団が血まみれじゃあーりませんか。世の狂気と言って数多と有れど、血まみれの布団を実際こう目にするってのは、なかなかありませんやね。

 

 と、いうかね。起きたら、なんかぬめっとしたんだよね。んで、なんだこれ?と思ったら、布団の血だまり。たぶん寝てから六時間くらいだったから、まだ乾かなかったのか。なんだこれ?と思いながら、朧げに昨夜の記憶をたどって、ああ、どっかに落ちたなーとか思いながら、右のふくらはぎを見ると、ふくらはぎが無かった。

 

 

と。

 

 

「あ、欠けてる」